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2022/08/31
施設長のつぶやき~利用者のペースに合わせるということ・利用者、家族の希望に沿うということ③~
昨日、京セラの稲盛和夫名誉会長の訃報をお聞きしました。
今更説明する必要はありませんが、稲盛氏といえば、京セラを一代で築き上げ
当時NTTの独占状態だった電気通信事業に対して、自由化に大きく貢献
またJALの再建や様々な慈善活動にも尽力されました。
私も以前勤めた会社の社長に勧められ「京セラフィロソフィー」や「成功の要諦」等
稲盛氏の著書を読ませて頂き勉強致しました。
特に「考え方×熱意×能力」の方程式では熱意や能力は0点から100点だけど
考え方はマイナス100点からプラス100点まである、つまりどんなに熱意があり
能力が高くとも考え方がマイナスであれば、物凄いマイナスのパワーになってしますという
方程式です。
この方程式には大変な感銘を受けました。
私も常日頃から「帰属意識は低いけど能力の高い職員=仕事の出来ない職員」と
説いています。
何も稲盛氏の考えをパクった訳ではありませんが、こうして振り返ってみると
無意識のうちに意識していたのかもしれません。
また「「忘己利他」という言葉も稲盛氏の著書より学ばせて頂きました。
稲盛氏はこの言葉に「もう懲りた」を掛け合わせ、自分の事ばかり考えていると
良くない事が起こる、他人のために生きる事が必要というような事を述べられて
いました(本を読み返した訳ではないでの不正確です)。
どのような人物にも賛否あるのは当然です。
稲盛氏も昭和、平成初期の考えが色濃く映る文言もあります。
そういった意味では令和の時代に稲盛氏の考え方を100%踏襲する事は難しいのかも
しれません。
しかしそれでもこれだけの功績を残された大経営者に敬意を払い、ご冥福をお祈り致します。
それでは前回の続きです。
再度、何故ショートを利用したい(させたい)のか、娘さんに確認した所
驚きの答えが返ってきました。
実はこの方が妻を在宅で介護していた主介護者で入院した妻の方が認知症もあり
要介護状態との事だったのです。
では何故、要介護者が入院した事で
主介護者がショートを利用しなければならないかをお聞きすると
「何だかんだで二人で協力していたけど、一人にさせるのは不安がある」との事でした。
加えて、当時大阪でも地震と大雨があった時でした。
この方は自宅裏のコンビニに毎朝新聞を買いに行く事が日課でした。
しかし自宅裏と言ってもとても長い階段を上った先にあるコンビニでした。
娘はその階段から転げ落ちる事を心配していました。
また地震が起きた時、タンスが倒れて下敷きになる事も心配されていました。
私は訪問時、必ず火災の心配がないかを確認します。
何故かというと火災の危険性が在宅生活が継続出来るかの一つの指標になるからです。
(当たり前ですが、火災は他者を巻き込みますので)。
この方の場合は、キッチンはIHに変わっていましたし、煙草も吸いません。
石油ストーブのような物も見かけませんでした。
私は「この方なら自宅で過ごせるのではないか」と思い、娘とケアマネにこう話しました。
「心配事はわかりました。しかし仮に階段から落ちて最悪の場合それで亡くなったとしても
それはその人が望んだ人生であり、そこを「寿命」と考えてはどうでしょうか。
何も施設や病院のベッドで亡くなる事だけが幸せな事ではないと思います。
タンスに関しては固定するなり、別の場所に移動させれば済むと思います。
ご自宅に帰りましょう。」
(タンスに関しては何故タンスを移動させずにお父さんを移動させるのか…
という思いもありましたが、それは言いませんでした…)
これを聞いたケアマネが「サービス事業所の人が(自事業所の利益も省みず)
ここまで言ってくれる事は少ないので、帰りましょうか」と言って下さり
結果、そのまま自宅までお送りしました。
その後、ケアマネより「やっぱり娘は入所させたいみたいやけど…」と電話がありましたが
「本人さんが本当にショートを利用したいと思ったら、また声をかけて下さい」と断り
以後、連絡はありませんでした。
このケースは本人のペース云々ではなく、家族の要望をそのまま鵜呑みにする事が
如何に不適切かを考えるために紹介しました。
このように利用者や家族の言いなりになる事が支援者として正しい事ではありません。
本当に利用者に必要な事とは何なのかを考え
時には利用者に諭すように語り掛ける必要もあるのです。