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2022/12/04
施設長のつぶやき~サービス提供可不可の根拠と契約という行為~
こんにちは、施設長の田原です。
昨日ついに
劇場公開されました。
内容はネタバレになるので下記クリックして下さい。
ネット上でも賛否あるようですが、スラムダンクファンは観て損はないと思います。
私は大満足でした。
それでは本題です。
先日のブログで家族がショート利用を希望したけど利用者本人に必要性がないと考え
本人もショートを望んでいなかった事を理由に自宅に帰って頂いたケースを紹介しました。
(施設長のつぶやき~利用者のペースに合わせるということ・
利用者、家族の希望に沿うということ①~③参照)
するとブログを読んだ職員より「こういうのは苦情にならないんですか」との質問がありました。
自分の対応でこのような疑問が出るのは想像していなかったので
なるほど、そのような視点もあるのかと思いつつ、少し考えをまとめておきたいと思います。
まず以下をご参照下さい。
(画像は介護保険法の研修で使用しているものです)
上記は地域密着型特養の文言ですが、全てのサービスに当てはまります。
このように介護保険法では「サービス提供拒否の禁止」が定められています。
赤字を見て頂くとわかると思いますが、要するに身体機能や認知機能の重度さや
お金のあるなしでサービス提供を拒否してはならない事が明記されています。
しかしその前に「正当な理由なく」という文言があります。
だからもしサービス提供拒否(サービス提供困難)の判断をするのであれば
正当な理由があるのかどうかを良く検証する事が求められます。
(もちろん拒否を前提に「正当な理由」を無理矢理こねくり回すようなのは話になりません)。
それでは前回のケースではどこが正当な理由になるのか考えてみたいと思います。
ショートステイには介護家族のレスパイト(いわゆる一休み)の目的もありますので
正直本人が望んでいなくてもしぶしぶ利用して頂く事はあります。
そのような方を見た時に「あんなに嫌がっているのに可哀そうだ。
何でそこまでして利用させるのだ」という声が聞かれる事もあります。
確かにそういう職員の気持ちも理解出来ます。
しかしレスパイト目的のショートステイを利用できなくなり、介護家族が疲れ果て
結果在宅生活が困難になった場合はどうなるでしょうか。
施設入所せざるを得なくなり本人が、一番望む在宅生活が継続できなくなります。
ショートでさえ拒否していた利用者です。施設入所に納得は出来ないでしょう。
つまり本人の在宅生活継続という希望を叶える事を長期的なスパンで考えた場合
一時的にしぶしぶでもショートを利用して頂く事には意味があるのです。
さらにレスパイトを確保出来ないと虐待の危険因子になりますし
究極には介護殺人等に発展してしまう危険性もあるでしょう。
前回のケースではどうでしょうか。
訳も分からず連れて来られた本人は在宅で妻を介護していた「主介護者」でした。
主介護者である以上、身の回りの事は自分で出来るでしょう。
そして家族の心配事は自然災害や本人の買い物でした。
明日、明後日台風が接近するからその間だけショートを利用したい(させたい)というのは
理解出来ます。しかしいつ起きるかわからない地震等の自然災害に備えてショートを利用する
というのは無理があります。
買い物は私自身は良い事と思っていますが
(前回書いたように仮にそれで事故があったとしてもです)
もし本当に心配なら家族が買い物に行くなど、協力すれば済む事です。
ましてこのケースでは家族が同居している訳ではないので
そもそもレスパイトの目的にもなりません。
ですから、このケースに関して私はサービス提供を拒否した覚えはなく
より良い支援方法を提案したに過ぎないと思っています。
しかしそれでももし正当な理由でサービス提供を拒否したのかと問われれば
間違いなく正当な理由になるでしょう。
むしろサービス提供をする正当な理由がないという表現の方が正しいかもしれません。
だから「本人さんが本当にショートを利用したいと思ったら
また声をかけて下さい」と言ったのです。
そしてそれを本人に話し納得して頂くのは我々の仕事ではく、家族間の問題です。
家族の話し合いによりお父さんに今後どこで生活して貰うのかも決めて頂く必要があります。
もちろん、認知症や身体的介護が重度な方で家族のレスパイトが必要なケースで
本人様がサービス提供を拒否している場合は、家族任せにせず我々が本人に粘り強くお話して
利用に結び付けていく事が正しい支援方法である事はいうまでもありません。
長くなったので続きは次回にします。