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2022/04/18
施設長のつぶやき~選挙権…権利を擁護する事と認知症ケアを考える~
こんにちは、施設長の田原です。
最近、ウクライナに千羽鶴を贈るという事が少し話題になっているようですね。
千羽鶴はご存じの通り、平和や無事を祈る象徴として、日本では浸透していると思います。
私も小学生の時、広島へ修学旅行に行く際、千羽鶴を折りました(折らされたに近い…)
しかし私は不器用で鶴なんて折れませんから、クラスメイトに迷惑をかけた
嫌な記憶しかありません…
しかし被災地など、本当に今現在困っている場所に、必要な支援物資の前に
千羽鶴が届くとしばしば迷惑になっている現状もあるようで…
現在のネット界隈での反応も「平和を祈って鶴を折ること自体は素晴らしいが
贈るのは迷惑だからやめた方が良い」というのが大半です。
私も全く同意見です。
ネットの意見ではSNSに上げれば良い、支援物資の周りに装飾品のような形で
入れておけば見た目も綺麗で良いのではないか、というような意見もありました。
これも素晴らしい意見ですね。
祈りを届けるという事も、重要な事と思います。
ただ…
「平和の象徴」というのであれば、ウクライナに贈っても良いのですが
むしろロシア側に贈って平和について考えて頂くという事も
重要なような気がするのですが…
それでは本題です。
どのような人に対してもその方の権利を擁護する事は重要な事です。
我々は日本国に住み義務を果たす代わりに様々な権利を行使できます。
その重要な権利の中に選挙権があります。
日本国籍を有する18歳以上のものは皆等しく選挙権があります。
この重要な権利は皆に等しくあると言いながら、実はひと昔前まで成年後見人制度における
被成年後見人と審判されると、選挙権がなくなりました。
(補助、保佐類型の場合は選挙権がありました)。
しかしこの事を不服とした一人の方が訴えを起こし、平成25年に公職選挙法が改正され
被成年後見人の方にも選挙権が与えられました。
どのような状況の方でも選挙権はあるという画期的な判決で
誰しもが当然の判決と思った事でしょう。
当施設は特養です。成年後見人が選任されている方もおられますし
成年後見人は選任されていませんが、認知症により理解力や判断能力が
低下されている方もおられます。
しかし当たり前ですが、全ての利用者に選挙権があります。
昨日、豊中市議会選挙がありました。
当施設に入所中の方は選挙会場に行かず、当施設内で不在者投票に参加する方がほとんどです。
ですので先週木曜日に、当施設内で不在者投票を実施しました。
数名の利用者が選挙に参加する意向を示し、自らの意思で投票しました。
そんな中一人の利用者である事が起こりました。
その利用者は認知機能は低下していますが
入所前から今後も選挙に参加したい意向を示していたため
普通に施設内の選挙会場にご誘導しました。
しかしいざ投票しようとした際、候補者、政党名の漢字を読む事が出来ず
「難しくてわからない」と言われ棄権されました。
別に選挙会場に行っても誰にも投票しない事はありますし
選ぶのが難しければ棄権するのは普通の事です。
それならば何も問題はありませんでした。
しかしこの方は「漢字が読めなかった。難しくてわからない。」という事で
すごく落ち込み不穏になってしまったのです。
以前も述べた精神的ダメージというものです。
(施設長のつぶやき~事故等による身体的ダメージと精神的ダメージを考える~参照)。
不穏になるから何でも禁止というのは問題です。
例えば家族と話すとその後不穏になるからという理由で
面会や携帯電話の持ち込みを禁止している施設があると聞いた事があります。
これは私としては考えられない事です。
家族と会った、会話した後の寂しさから不穏になるのであれば
その時は職員が寄り添いケアする、それは介護の基本と思っています。
不穏になった利用者の対応をする事が職員の負担となるという理由で
家族との関係を断ち切る事は考えられない事です。
しかし職員のケア方法で不穏や精神的ダメージを防げるのであれば
それは実施するべきことです。
それが認知症ケアの基本である「失敗に備える」という事です。
長くなったので続きは次回にします。